2011年10月、観測ロボットを使った火山観測についての情報交換の場として、第3回伊豆大島無人観測ロボットシンポジウムが開かれた。それに参加させていただく形で、ほむらチームも三原山(伊豆大島の火山)の麓にて実地テストを行った。
今回の変更点を以下に上げる。
今まで使用していたエネループ(ニッケル水素電池)から、同じ体積で容量が2倍のリチウムポリマー電池に変更した。連続走行時間が最大で3時間程度となった。
リチウムポリマー電池は、過放電、過充電によって爆発する可能性がある。今回、すべての回路に過放電防止の安全装置をつけ、メイン基盤もそれに合わせて新しいものを搭載した。また、走行中に電圧をリアルタイムでモニターできるようにした。
前回までのカメラは不安定だったので、新しいカメラに変えることで安定して撮影できるようにした。左が速度重視時、右が画質重視時の新型カメラによる撮影画像。
サンプル採取などの細かい作業を行うためには、マニピュレータが必要となる。今回、マニピュレータの試作品を試験的に搭載して、走行実験を行った。
新しく搭載したリチウムポリマー電池の性能の検証、新カメラを用いた遠隔操縦実験、ロープを使用せずに急斜面を降りるテストを行った。また、無人観測ロボットシンポジウムに参加し、情報交換を行った。
まず、三原山裏砂漠において、目視によらない遠隔操縦の実験を行った。安定してカメラデータを得られるようになったが、無線の通信速度が遅く画像が約7秒おき程度でしか取得できなかった。現状ではカメラの画像を見ての遠隔操縦は難しいといえる。また、コンパスの精度が良くないため、機体を転回した時に機体の向きがわからなくなり、走行が困難になった。車体を目視しない遠隔操縦を行うためには、通信速度を上げるためにZigbeeや携帯電話を用る、機体の向きを正確に把握するためにジャイロコンパスなどのセンサーを搭載するなど、改良する必要がある。
次に、スコリア斜面の走行試験を行った。裏砂漠の櫛形山付近から三原山斜面を登った。初めは傾斜が小さく問題なく登れたが、途中から28度程の斜面になり、車輪が滑る、斜面が崩れるなどして斜面を登ることが難しくなった。スコリア斜面では傾斜が急になると車輪が滑るので、車輪の回転速度を制御したり、車輪の形状を変更するなどの対策をとる必要がある。2時間で約400mほど斜面を走行して、電池残量がなくなった。エネループを利用していた際は、斜面ではおよそ1時間ほどで電池がなくなっていたので、運用時間が2倍程度に上昇したといえる。
実験最終日に、櫛形山の急斜面をロープを用いずに降りる試験を行った。最大傾斜60度ほどの斜面を下りたが、途中から横転して転がり落ちてしまった。落ちた衝撃でチェーンを挟むアルミ板が曲がったため、車輪を回すことができなくなったが、機体自体には大きな損傷はなかった。チェーン部分の修理のみでスコリアや岩場などの不整地を走行して基地まで戻ることができた。急斜面では今回のように転落する危険性が考えられるが、現行の機体でも基本的には十分な耐衝撃性を保持しているといえる。今回問題となったチェーン部分の保護は、再検討する必要がある。
今回の実験では、リチウムポリマー電池と新型カメラを搭載した。従来に比べて連続走行時間が2倍となり、カメラも安定してデータを取得できることが確認できた。また、急斜面の降下実験により現機体の耐衝撃性を評価し、改善が必要な部分の検討を行った。遠隔操縦に関しては、通信速度やコンパスの精度などに問題があることが明らかとなった。
今後は、携帯電話の利用による通信速度の向上や、より積載能力、耐久性に優れた新機体の開発を行う予定である。
実は、今回の実験に向けてマニピュレータを開発し、実際に機体に搭載して持ってきていた。しかし、初日のデモにおいて、マニピュレータの電源を入れずにほむらを動かしたため、走行中にマニピュレータが振り回され、最終的に車輪に巻き込まれて壊れてしまった。せっかくのマニピュレータ試作一号機は、一度も使われることなくお陀仏となったのだった。