分子の世界へようこそ
分子の運動はそれを構成する原子核と電子の間に働く力に支配され、外部からの熱、光、磁場、電場などにより変化します。その結果、ある場合には原子間の結合が切れ、化学反応が起こります。これらのしくみを量子力学を理論的基礎として明らかにし、新しい分子科学の開拓を目指しています。
当研究室では、おもにコンピュータ自動制御の波長可変リングレーザーを用い、きわめて単色性の良い光を光源としてエネルギー分解能の非常に高いレーザー分光実験(超高分解能レーザー分光)を行うことにより、気体状態にある比較的簡単な分子(二原子分子・対称性の良い多原子分子)について次のような研究を行っています。
分子の構造・電子状態を探る
分子はそのエネルギーを、電子のエネルギー・各原子の振動エネルギー・分子全体の回転エネルギー・分子全体の並進エネルギーとして持っており、それぞれの分子はそれぞれ固有のエネルギー状態にあります。そこで、超高分解能レーザー分光実験により光遷移をスペクトル線として観測することによって、基底状態および励起状態の単一電子・振動・回転エネルギー準位を決定することができます。こうして決定された電子状態の準位のエネルギーから、分子の形や大きさ、原子間の結合の強さ、分子における電子の結合状態などに関する情報が得られます。
分子のダイナミックス・化学反応をミクロに調べる
化学反応は分子の構造の変化、化学結合の切断、電子の移動などの過程を経て進みます。この化学反応の過程を分子の構造・エネルギー状態およびその経時変化まで詳細に解明するための研究を行っています。1.で観測した電子状態(特に励起電子状態)において、観測されたスペクトル線のシフトや線幅の変化から、電子状態間の相互作用の様子や解離反応に関する知見も得られます。特に電磁石を併用して、外部磁場下でのスペクトルの変化を観測することにより、相互作用の詳細を知ることが可能です。
レーザー誘起化学反応
化学反応の過程を理解することにより、化学反応の設計・制御が自由に行えるようになれば、有用な分子を作り出したり、効率のよい科学的エネルギー変換に利用できます。現在、レーザー光により始状態の電子・振動・回転状態までを選別した分子および原子の衝突による特定の化学反応の制御に関する研究が進行中です。
近年、当研究室ではレーザー光の単色性の良さを極限まで活用した各種ドップラーフリー分光法を開発・展開し、多くの成果を上げています。
さらに詳しい説明は 実験編 最近の主要な成果 過去の主要な成果