SC研究会―「公法学からの市民社会 への学際的・構成主義的接近」

 
 本研究会は、2009-11年度に科研費基盤(B)を取得し((研究題目「構造改革型統治システムへの公法学を軸とした学際的接近-社会構成主義的視点の導 入」(研究課題番号:21330006) 、1990年代後半以降のわが国の統治システムに関して、 社会構成主義的視点に基づく学際的共同研究を続けてきました。  
 バーガー/ルックマン(『現実の社会的構成(新版)』新曜社、2003(原著1966年))や スペクター/キツセ(『社会問題の構築』(マルジュ社,1990)(原著1977年))な どを嚆矢とする社会構成主義(「構築主義」)は、社会学・歴史学をはじめ芸術、教育学、心理学、医療、科学技術社会論(STS)などの広汎な分野で領域横 断的に影響を与えているパラダイムです。ものごと(物・人・集団・出来事)が本来的・内在的に特定の性質を備えているという「本質主義」的想定に反対し、 人々の社会的な言語使用に注目する点に共通の特徴を見出すことができます。上記の共同研究の成果を継承し、研究対象を「統治システム」から「市民社会」を 含む総体的分析へと拡張するのが現在の研究プロジェクト「公法学からの市民社会への学際的・構成主義的接近―リスク・ガバナンス・社会連帯」(科研費基 盤(B)、研究課題番号:24330011)です。

 1990 年代以降、政治学・社会科学における「市民社会論のルネッサンス」ともいうべき状況が生まれ、「市民社会」論に対する注目が世界的に高まっています。法律 学の分野での「市民社会」研究は、これまで基礎法学および民法学によって主に担われてきましたが、以下のような現象は、公法学の視点から「市民社会」論に 取り組むべき必要性を高めているでしょう。

(1) グローバル化も背景とする「公私協働」の進展・「公権力・公益の担い手の拡散」、市民参加の多様な制度化は、公−私ラインの再検討の必要性をもたらしてい ます。そこでは行政サービスの民営化や介護保険制度の導入など、契約的手法により公共目的を達成する手法の重要性が高まっています。また、市場メカニズ ム・団体による自主規律・公論による統制などを多元的に組み合わせた市民社会内ガバナンスの仕組みが果たす公共的機能に着目する必要もあります。

(2) いわゆる「新しい公共」の登場も踏まえた「市民社会」への注目は、公法学の主題であった公的意思形成過程において市民社会が果たす役割、なかでもその担い 手と諸関係についての理論的考察の必要性を高めています。「トクヴィル=多元主義モデル」と「ルソー=一般意思=統合モデル」の対比(樋口陽一)が夙に語 られていますが、具体的な制度と実態を踏まえた上での公的意思形成の過程を明らかにするためには、市民社会の「担い手」である個人(抽象化された主体か、 負荷を有する主体か)や団体(地縁的共同体、自発的結社、企業・事業者団体等)がいかにして析出され、どのような相互関係を取り結ぶのか(市場的-競争的 契機と社会連帯的-共同的契機との緊張関係)について、多様な分野の学問的知見を踏まえた考察が求められているでしょう。

研究キーワード―「リスク」「ガバナ ンス」「社会連帯」

  本研究は、公法学を軸とした学際的なアプローチにより、上記の課題に取り組みます。分野の壁を越えた議論をより活性化するため、研究キーワード(「リ スク」「ガバナンス」「社会連帯」)を各年度毎に設定して研究を進めていきます。



研究助成

日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)(2012-2014年度、課題番号 24330011)をいただき、研究を進めています。
日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)(2009-2011年度、課題番号 21330006)を頂きました。
平成21年度旭硝子財団研究助成 を頂きました(研究課題名:「持続可能な まちづくり・環境行政のための市民・住民 参加の制度設計に関する学際的研究―社会構成主義的視点の導入」(助成成果報告書))。
○(財)土地総合研究所「平成20年度土地関係研究推進事業」より研究助成を頂きました(研究課題名:「構造改革型認知共同体」における住民参加の法制度 設計へ向けた萌芽的学際研究−社会構成主義的視点の導入」)(2008/10)(研究成果報告書)。