ごあいさつ

 伊藤 光宏


神戸大学大学院保健学研究科

病態解析学領域 細胞機能・構造科学分野 血液学研究室 教授

神戸大学大学院医学研究科

プライマリ・ケア医学講座<寄付講座> 教授 (兼担)

米国ロックフェラー大学

生化学・分子生物学研究室 客員研究員(客員教授)

 

はじめに

 病態解析学領域血液学研究室を担当しております、伊藤光宏です。血液内科学・腫瘍内科学が専門です。本領域は平成204月の保健学大学院部局化に伴って始まりました。前身は医学部保健学科病態解析学講座であり、血液学を担当した初代教授は故磯部敬名誉教授で骨髄腫の大家、2代目は寮隆吉名誉教授で輸血学の大家であり、いずれも私の尊敬する恩師で、優れた医学徒です。私は平成184月から引き継いだ3代目の血液学担当です。若輩ではありますが、血液学や腫瘍学を中心とした臨床と教育、研究に全力を尽くす所存です。今後も、尚一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

これまでの臨床と研究の背景

 私は医師になって約半分の時間を臨床に、約半分の時間を研究に費やしてまいりました。私は病理学の杉山武敏教授の感化で学生時代から悪性腫瘍に深い興味を持ち、内科医になってからは造血器悪性腫瘍の臨床に取り組んでおります。1989年に神戸大学で始めての同種骨髄移植を(現)兵庫県立がんセンターで行い、以来主に造血器悪性腫瘍を中心に診療しております。

 研究は、細胞の増殖と分化と発癌をテーマに行ってきました。中でもリガンドが存在するため臨床応用しやすい受容体に注目しました。大学院時代は膜受容体を取り上げ、新規受容体のクローニングとノックアウトマウスの作製を行い細胞増殖機構を研究しました。その後、留学を期に脂溶性リガンドの核内受容体研究に転向し、転写の世界的権威、ロックフェラー大学ロバート・レーダー教授の研究室での転写メディエーター複合体の発見につながります。帰国後も転写メディエーターの造血における役割を中心に研究を続けています。

 

大学院教育について

 20年度の大学院改組にあたり、私達は真摯に研究を邁進することを最重要課題と受け止めています。幸いにして私達のミッションに優秀な学生達が賛同して集まってきました。血液学研究室の若い力を結集してオリジナルで意義のある研究を行い成果を発信するものでありたいと願っています。
 一方、平成20年度より大学院医学研究科を兼担し、同年医学研究科の内科学講座血液内科学分野教授、続いて21年度にはへき地医療学分野の分野長を拝命しました。これにより医学科の学生教育や、医師の卒後教育の責任を持っています。医師不足が社会問題になる今日ですが、兵庫県においても内科医の育成が強く求められており、特に地域では総合内科の素養を持つ内科医の育成が急務となっています。また専門診療科の中でも、血液内科医は地域で圧倒的に不足しており、神戸市内でも不足が叫ばれています。医学生や若い医師に内科、特に総合内科的素養の重要性や血液内科の面白さを伝え、優秀な内科医を多数育成・輩出して地域に貢献するとともに、リサーチ・マインドを持つ内科医、将来の指導的な医学研究者、クリニシャン・サイエンティストの養成にも力を注ぎたいと思います。

 さて、神戸大学大学院医学研究科は平成20年度から5年間のグローバルCOEプログラム「次世代シグナル伝達医学の教育研究国際拠点」に採択され、私は事業推進担当者に選ばれました。神戸大学の命運がかかった重要なプログラムです。その期待に応えるべく、研究に邁進する覚悟です。

 私はこれまで多くのよき恩師に恵まれてきました。また神戸大学には大変にお世話になってきました。研究の面白さと厳しさを医学研究科と保健学研究科の両方の若い学生達に伝え、将来の血液学を担うM.D.Ph.D.の後進を育成することは極めて重要なことであり、神戸大学と恩師の先生方に対する恩返しと受け止めています。また後進の育成をとおして神戸大学と日本の医学界に貢献したいと切望しています。

 

学部教育について

 神戸大学医学部保健学科は、先見性の高い先生方のご尽力で全国でも最も早い時期に、コメディカルの高等教育機関として4年制大学のみならず大学院博士課程まで整備された伝統ある学府です。その伝統の上に大変優秀な学生が全国から集まってきます。私が着任して3年がたち、私は神戸大学の保健学科の学生が如何にすばらしいか、感慨をもって感じております。今後も医療専門職に限らず社会の指導的役割を担う人材を輩出するよう、努力を惜しまない決意です。
学生たちの多くは大変優秀で、中には自らは気付かずとも非常に大きなポテンシャルを持つ一握りの者がいます。

 医学科の教育も同様に重要です。これからの医療を担う良医を育てるべく、特に内科医を目指す医学生には総合内科の重要性と血液内科学の重要点を伝えるように努力したいと思います。

 両学科の学生教育にあたっては、関係の医療機関の先生方のご理解とご協力が必須です。よい医療人の育成のため、どうかよろしくお願い申し上げます。

 

研究へのお誘い

 研究は長い道のりを走る地道なマラソンのようなものですが、その過程で世界の誰も知らない事実を発見したときの喜びは他に代えられないものです。私達の研究に興味を持ち、熱意をもって参加を希望される方を、学生や卒後にかかわらず、また出身学部にかかわらず、期待します。学内検査技術科学専攻の3年生、2年生の皆さんの訪問は特に歓迎します。私は非常に大きなポテンシャルを持つ学生が成長し才能を開花させるのを間近に見たいと願っています。医歯薬学科卒後の方については大学院医学研究科の身分について別途考慮したいと思います。私達の研究に興味をもたれた方は伊藤(下記)まで是非遠慮なくご連絡ください。

                    電話: 078-796-4546(直通)
                    e-mail: itomi*med.kobe-u.ac.jp (*を@に変えてお送りください。)